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研究者のアドベンチャーと、経営におけるベンチャーの2つのマインドが出会う場をつくり、アイデアをプロジェクトとして速やかに立ち上げる必要がある。
日本的知恵を付けたベンチャーインキュベーターを整備する。
現在の大学は、ハード面でも大型研究費を活用するインフラ構造を欠いており、民間からの寄付研究部門も、固有のスペースを持たないため、従属的な状態におかれている。
政府や民間からの支援を一時的なサイエンスバブルに終わらせないためにも、早急にプロジェクト研究のハードとソフト、すなわち建物と推進システムを設置し、大型研究費を有効に活用する体制を整備する必要がある。
さらに、若手による創成期の個人研究、および実績ある研究リーダーによる大型プロジェクトを推進するために、省庁を超えた、統合的な先端生命科学推進財団(仮称)を設立する必要がある。
同機構はアメリカのH医学財団(HHMI)のように大型グラントやフェローシップの選考、授与、評価を行う。
そのためには、日本型村社会から脱却し、公平で科学的な評価システムを確立することが必要である。
医学は、患者を総合的に観察し、病因を特定することにより、科学的な診断と治療を行うことをめざしているが、現在でも、医師の主観に依存する経験科学の色彩を強く持っている。
しかし、分子生物学などの生命科学の発展により、医学は経験科学から抜け出し、診断から治療技術に至るまで、客観的科学としての性格を強めている。
創薬、すなわち医薬品の開発も、分子医学研究、産学官の連携による先端治療開発システムを推進する多くの若手研究者を擁する大学は、そのようなシードを生む機会に恵まれているが、アイデアを実行に移す場を欠いている。
優れた若手研究者を擁する大企業でも、規制により同様な制約を持つ場合が多い。
こうした制約を突破するために、自由に活動しつつ、かつ大学と人的にも連携できる、フリーゾーン(リサーチパーク)を拠点大学とその周辺に設置し、研究者、大学、企業の先端研究ネットワークを形成する。
これは官民共同の第3セクター方式による日本型ベンチャー、目標設定と投資を個人のイニシアチブと責任で行うアメリカ型ベンチャー、および企業の先端的研究者集団等から構成される。
第3セクターは、企業の相乗り型ではなく、個性的な企業の支援によりリスクに挑戦する研究者のリーダーシップが発揮される形が必須である。
このようなベンチャーインキュベーターは政府により支援されるが、その運営は民間のイニシアチブにゆだねる。
日本政府は、先進国サミットでの合意に基づき、ヒューマンフロンティアサィエンスプログラム(HFSP)を支援してきた。
フランスのストラスブールに本部をおくHFSPは、国際共同プロジェクトの推進、若手研究者のフェローシップを通じて分子生物学や脳神経研究などで世界アジア環太平洋の国際生命科学ネットワークのハブとしての役割を果たす最新の成果に基づいて、標的を絞り込む、総合的な科学技術としての性格を備えつつある。
また、従来の有機化学を土台とする薬学を超えて、ゲノム医学に基づく創薬や、細胞治療や遺伝子治療など、分子医学の成果に基づく先端治療の開発も重要な課題である。
したがって、新たな医薬品や治療法の有効性は、客観的で科学的なデータに基づいて判定され、その臨床応用は、高い倫理性に基礎に評価されねばならない。
しかし、日本では、医薬品や新たな治療法の有効性を客観的、科学的に判定する臨床治験システムを欠いている。
その原因には、医療がもつ科学技術としての制約に加えて、医学界、医薬品産業、官庁の日本特有の体質が寄与している。
これらの制約を克服するために、臨床治験センター、医薬品安全性検定センター、全国疾患情報センター、創薬研究センターなどからなる先端治療開発機構を、産学官の協力で全国の拠点に建設することが必要である。
本機構は、アメリカのNIH型の公的研究施設と、民間ベースで自由度の高いベンチャー型研究施設から構成される複合体である。
在来型の研究システムに並行して走る、新幹線型の研究システムは、外国人や女性に開かれたアドベンチャーのフリーゾーンを結ぶバイオベンチャーハイウェイを建設するに重要な貢献をしている。
このプログラムは日本の国際化の象徴であるが、こうした外での国際化とともに、内なる国際化を進め、日本自体が世界の研究者に魅力ある生命科学のセンターとなる必要がある。
北米、ヨーロッパには、NIH、コールドスプリングハーバー(CSH)研究所、欧州分子生物学研究所(EMBL)などの中核研究所が設立され、先端的生命科学の推進、交流、普及センターとして活動している。
しかし、経済発展とともに、生命科学、医科学における飛躍的発展が予測されるアジアには、その交流の中核となる研究所が存在しない。
アジア太平洋地域の共同事業として、先端的生命科学を推進し、その研究成果を人類の健康と福祉のために共有することが求められている。
EMBO、NIHやユネスコの支援を得て設立されたアジア環太平洋の国際分子生物学ネットワーク(IMBN)はAPECのプログラムとなったが、さらに日本政府と産業界の支援により、その中核となる国際分子医学研究所(IMBL)を日本やアジアに設立することを提案する。
世界の優れた研究者を集めるIMBNとIMBLは、アジア環太平洋地域に設置される分子医学研究所をネットワークで連携する先進拠点(COE)としての機能を果たす。
グローバルスタンダードに見合うキャリアパスである。
さらに、政府と民間の協力により設立される生命科学推進財団は、拠点大学や民間研究所の独創的な研究を支援することにより、アメリカのHHMIのように大学を超えて、流動性の高いCOEの先端研究ネットワークを形成する。
政府と産業界の支援によるフリーゾーンに集まる独創的研究者は、IMBN/IMBLや先端治療開発機構と連携し、科学におけるアドベンチャーから新たなバイオベンチャーを生み出す推進力となる。
こうして形成される生命科学の先端研究ハイウェイは、中央集権的ではなく、国内外のネットワークにより、分散的、個性的な特徴を持つことになる。
ライフサイエンスは、脳科学、情報科学、システム生物学等を通じて、生命科学、分子医学、人文科学の学融合を促進するとともに、21世紀のリーディング産業を推進する役割を果たすことが予測される。
このような、自由な環境において、ライフサイエンスに立脚する野心的な研究集団が活動し、21世紀の先端生命科学とリーディング産業を牽引することが期待される。
(Ak)ここはそのような試みの1つであり、臨床医学者のK、基礎生命科学者のA、創薬科学者のN、バイオベンチャー企業経営者のYの4人が、専門領域を超えて日ごろぶつかっている諸問題を率直に提起し、討論したものである。
研究者、学生、産業界、官僚、政治家、一般市民など、広く社会に先端医療と医薬品開発をめぐる諸問題を提起し、ともに考えるきっかけとなることを期待している。
このような議論は、生命科学と先端医科学の発展に直面して、大学、研究所、病院、医薬品企業のこれまでの研究協力の仕組みを見直し、創造的な改革を行うために不可欠の作業であると確信する。